IgG Fc及びFuEP2/Ex2 cDNAを挿入したレンチウイルスベクターを構築した。これらをGFP遺伝子発現レンチウイルスベクターと混合したものをウイルス産生細胞に導入し、ウイルス液を得た。このウイルス液をマウスの骨格筋へ投与したところ、骨格筋においてGFPの発現が認められ、投与後一週間で採取した血清でもIgG Fcを検出することが出来た。この結果より、本研究で構築したウイルスベクターによる発現系はin vivoでも適用が可能である事が示唆された。現在、投与するウイルス液の至適条件を更に検討している。 併せて、15-PGDH蛋白発現系の構築を試みた。初めに、一般的な哺乳細胞発現ベクターにヒト15-PGDH cDNAを挿入した発現ベクターを二種類ののヒト膵臓癌細胞株へ導入した。その結果、CyclooxygenaseおよびEP4受容体陽性のBxPC-3細胞では導入細胞の生存が著しく阻害され、安定発現株が得られなかった。なお、CyclooxygenaseおよびEP受容殊陰性のMiaPaCa-2細胞では安定発現株が得られたが、15-PGDH強制発現による細胞増殖への影響は認められなかった。これは、EP受容体シグナリングとPGE2産生系が機能している癌細胞では15-PGDHが細胞増殖や生存シグナリングの制御にも関わっている可能性を示唆するものと考えられた。このため、BxPC-3細胞に関しては一過性過剰発現系での解析と共に、ドキシサイクリンによる発現調節が可能な発現誘導システムを用い、in vivoでの検討を含めた詳細な解析を行っていく予定である。
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