前年度の検討に引き続き、FuEP2/Ex2 cDNAを組み込んだレンチウイルスベクターを用いたマウス感染モデルでの血中モニタリングを行った。前年度の結果より、血中へのFuEP2/Ex2の放出量は筋内投与したウイルス粒子数に依存する事が示唆されたので、109オーダーまでウイルス粒子数を増やし感染させたが、充分な血中レベルの放出には至らなかった。また、卵巣癌腹膜播種モデルにおいてFuEP2/Ex2の与える影響を検討した。FuEP2/Ex2を安定的に発現する卵巣癌細胞(SKOV/ip-FuEP2/Ex2)を樹立し、雌ヌードマウスへ腹腔内投与したところ、対照群(ベクターコントロール細胞投与群)に比して、有意に腫瘍重量と血性腹水量が減少していた。腫瘍組織を用い、Ki-67とmCD31の免疫染色とTUNEL陽性細胞数の計測を行ったところ、微小血管密度の有意な減少をアポトーシス細胞数の有意な上昇が認められた。 ドキシサイクリン処理によって15-PGDH発現が誘導されるコンディショナル発現系を用い、15-PGDH安定発現株をヒト膵臓癌細胞株BxPC-3より得た。これを用い細胞増殖能を検討したところ、15-PGDHを発現させる事で細胞増殖能が有意に減少した。また、インスリン、IGF、EGF、血清除去、TRAILなどの影響に対する感受性を検討したところ、インスリンおよびEGFによる増殖刺激が15-PGDH発現により減弱し、TRAILによるアポトーシス誘導が15-PGDH発現により増強する事が明らかになった。
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