研究概要 |
副腎癌に対する分子標的療法の試みとして,上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤の臨床応用が報告された(JCEM, 2008).EGFRはNa/グルコース共役輸送担体-1(SGLT-1)に結合することでSGLT-1を安定化し,細胞内へグルコースを輸送し続けていることが明らかとなり,癌治療戦略の標的因子として注目されている(Cancer Cell, 2008).そこで我々は副腎皮質癌細胞における糖代謝酵素の発現を検討し,SGLT-1阻害剤の同細胞に及ぼす効果を検討した.方法として,1.ヒト副腎皮質癌細胞(H295R, SW-13)におけるSGLT-1/2及びEGFR (variant 1-4)の発現解析を行った.2.同細胞を用いて,EGFR阻害剤:AG1478及びSGLT-1阻害:Phlorizinの腫瘍増殖に及ぼす効果をApopercentage assayで,糖代謝関連遺伝子に及ぼす効果をPCR Arrayを用いて検討した.3.2の条件下において,細胞内に蓄積したApopercentage Dyeを蛍光光度計を用いて定量化した.結果,副腎皮質癌細胞において,SGLT-1,EGFRの発現を認めたが,SGLT-2の発現は認めなかった.EGFR阻害剤は単独添加により,濃度依存的に腫瘍細胞死を誘導した.SGLT-1阻害剤は,単独添加では有意な腫瘍細胞死を認めなかったが,EGFR阻害剤により誘導された腫瘍細胞死を相加的に増強させた.またPCR Arrayでは,SGLT-1阻害剤とEGFR阻害剤は相加的にPPAR関連遺伝子群の発現を増加させた.副腎皮質癌細胞を用いた実験系において,細胞内糖代謝制御に関わるSGLT-1阻害剤は腫瘍細胞死をEGFR阻害剤との併用条件下で相加的に誘導することが明らかとなった.
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