研究概要 |
本研究では、難治性の悪性Bリンパ腫の新たな治療戦略として、免疫遺伝子治療法の開発研究を目的とする。治療法の概要は、Bリンパ腫細胞の表面抗原(CD19抗原)を認識するキメラT細胞受容体を発現したT細胞を体外で大量に調整し、患者体内に戻すことでBリンパ腫を効率よく排除しようとするものである。本年度は、当該免疫治療法開発のための基礎検討を行い、以下の結果を得た。1、レトロウイルスベクターによる末梢血T細胞へのキメラT細胞受容体遺伝子の導入効率は、約80%であった。2、作製した遺伝子改変T細胞の選択的な増幅のため、CD19発現マウス線維芽細胞(NIH3T3)による抗原刺激を行ったところ、遺伝子改変T細胞は4週間の培養で約1,000倍まで増幅し、キメラT細胞受容体の発現率は、ほぼ100%に達した。3、遺伝子改変T細胞は、抗原特異的にIL-2やIFNγを産生した。4、これらのT細胞は、CD19陽性のBリンパ腫細胞株(Raji,Daudi)を効率よく試験管内で殺傷した。以上の結果から、遺伝子改変T細胞の悪性Bリンパ腫細胞への抗腫瘍効果が明らかになった。
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