研究課題
本研究では、39種類のヒトがん細胞株(JFCR39)について、種々のがんにおけるPI3Kおよびその周辺パスウェイ因子の変異・活性化状態を網羅的に測定した。具体的には、PI3Kの4種の触媒サブユニット(PIK3CA、PIK3CB、PIK3CG、PIK3CG)、がん抑制遺伝子PTEN、KRAS、BRAFについて、変異解析および発現解析を完了した。また、PI3KおよびRasパスウェイの下流因子であるAkt、GSK-3β、TSC2、mTOR、S6K1、4E-BP1およびMEK、ERKなどのリン酸化状態を抗リン酸化体特異的抗体を用いて解析した。以上の解析結果をデータベース化し、パスウェイ因子間の相互の関連性を解析した。その結果、PTENの機能を喪失しているがん細胞株はAktシグナルが活性化され、KRAS/BRAF変異細胞は逆に抑制されているなど、興味深い関連性が多数見出された。一方、ZSTK474を含む各種PI3K阻害剤、Akt阻害剤、mTOR阻害剤を収集し、これらのJFCR39に対する有効性スペクトルを測定し、薬剤相互の機能的類似性を検討した。そして薬剤の有効性データを先に述べたPI3Kパスウェイ因子の変異・活性化状態と統合し、両者の関連性を解析することにより、PI3Kパスウェイ阻害剤の効果予測マーカー候補の抽出を試みた。その結果、KRAS/BRAF遺伝子変異がんは一般にPI3K阻害剤が効きにくく、リン酸化Aktを高発現しているがん細胞は一般にPI3K阻害剤が効きやすいという相関を導き出した。これらの因子はPI3K阻害剤感受性予測マーカーとして利用できる可能性が示された。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (10件)
Cancer Sci
巻: (In press)
Eur J Cancer
巻: 46(6) ページ: 1111-21
Cancer Res.
巻: 70(12) ページ: 4982-94