研究課題
当研究室ではこれまでに、優れた抗腫瘍効果を示すPI3K阻害剤ZSTK474を見出し、世界に先駆けて発表した。本剤は2011年より米国で第一相臨床試験が開始されている。分子標的抗がん剤の開発に当たっては、その効果を予測するバイオマーカーの同時開発が求められており、我々もバイオマーカーの探索を進めている。その方法論として、本研究では、39種類のヒトがん細胞株(JFCR39)について、種々のシグナル伝達分子の活性化状態(発現・リン酸化・変異)を調べるとともに、ZSTK474をはじめとする種々のPI3K阻害剤の感受性を測定してデータベース化し、両者の関連を調べることによりバイオマーカー候補を同定しようとする戦略を試みている。昨年度までに、リン酸化Aktを高発現しているがん細胞はPI3K阻害剤が効きやすく、KRAS/BRAF遺伝子に変異があるがん細胞はPI3K阻害剤が効きにくいという相関を見出した。本年度は、新たに40種類のタンパク質について発現解析を行い、データベースに加えた。これらについてzsTK474の感受性との関連を検討し、ZSTK474の治療抵抗性に関連する分子を1つ見出した。一方、in vivoにおけるタンパク質発現とPI3K阻害剤感受性の関連を効率的に検討するため、ヌードマウス皮下に移植可能でZSTK474の感受性をin vivoで測定済みの24種類のがん細胞についてホルマリン固定・パラフィン包埋サンプルを用いた組織マイクロアレイ(TMA)を作成した。作成したTMAを用いてリン酸化Aktの発現量を免疫組織化学法により解析したところ、リン酸化Aktの発現が高いがん細胞はZSTK474が効きやすいという相関がin vivoで確かめられた。ZSTK474の感受性と関連が認められたこれらの分子は、ZSTK474の効果予測マーカーとして臨床応用されることが期待される。
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