研究課題
胃癌の予防にはヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌治療が有効であるが、除菌後に発生する胃癌を完全に抑制することはできず、除菌後胃癌に対する新たな予防法開発が求められている。本研究では、齧歯類胃癌モデルを用いて、既存の微小癌組織を退縮させる効果をもち、近年の疫学調査で胃癌予防効果を示すことが報告されている、アスピリンによる除菌後胃癌の化学予防効果について検討する。本研究で使用予定であったSPFスナネズミ(MGS/Sea系)が生産工場での感染事故により購入不能となったため、他系統(MON/Jms系)を用いた予備実験を行った。その結果、感染時期をMGS/Sea系の場合よりも1週早い5週齢に設定することで、従来通りに高いピロリ菌感染率と、高度の慢性胃炎を惹起できることが確認された。この結果を受けて、MON/Jms系のスナネズミを用いて本試験を実施することとした。5週齢、雄のスナネズミ(MON/Jms系)150匹にピロリ菌あるいは溶媒を胃内接種し、感染後2週目よりメチルニトロソウレア(MNU)を10ppmの濃度で20週間飲水投与した。対照群として無処置群およびピロリ菌感染・MNU非投与群を用意した。実験開始から36週後(MNU投与終了から14週後)、約80匹にアモキシシリン・クラリスロマイシン・ランソプラゾールの3剤併用による除菌治療を実施した。除菌から1週間後、除菌群のうち半数(約40匹)に対して400ppmアスピリンの混餌投与を開始し、52週経過時に解剖予定である。以上の実験結果から、これまでピロリ菌感染モデルとしては用いられていなかったMON/Jms系のスナネズミも、同モデルに利用できることが明らかとなった。今後、実験開始後52週が経過した時点で本試験の動物を解剖し、アスピリンによる除菌後胃癌抑制効果の有無について検討を行う予定である。
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