本研究では、森林内の大気中酸素(O_2)濃度と二酸化炭素(CO_2)濃度の観測から、陸上植物の呼吸、光合成量を分離して評価することを目指す。そのためO_2濃度の高精度連続観測装置を開発し、岐阜県高山森林キャノピー内大気の観測に応用する。またチャンバー法によって採取した空気の分析により、葉や土壌呼吸による呼吸、光合成活動に伴うO_2 : CO_2交換比を明らかにする。H22年度は、O_2濃度高精度連続観測装置の開発を進めた。装置の検出器として燃料電池をO_2センサーとした差分燃料セル分析計を採用した。その高精度化のため、空気試料が流れる配管内の圧力や温度の変化によるO_2とN_2の分別を防ぐことが必要となることから、高精度圧力計と流量制御バルブを用いてO_2センサー部を流れる空気試料の圧力を10^<-3>Paで安定させる制御システムを製作した。またO_2センサー部の温度を10^<-2>℃のオーダーで安定させるために分析計の断熱処理を行った。さらに、空気試料中に水蒸気が存在すると、水蒸気量の変動により空気のO_2分圧が微少に変化し、高精度の測定ではその変化がO_2濃度の観測値に影響を及ぼしてしまうことから、分析計に流れる大気試料を露点-70℃以下に除湿し、水蒸気の影響を除去する装置の製作を進めている。実際の大気観測への応用のためには、産業総合技術研究所による毎月の高山サイト観測装置保守点検までの期間はメンテナンスを必要としないことが必要となるため、電子除湿機、パーマピュアエアドライア、および冷却トラップを組み合わせた装置構成とした。本装置での測定は相対測定法であるため、O_2濃度の基準となる標準ガスが必要となる。そのためO_2濃度を調整した新たなO_2濃度標準ガスを製造した。
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