研究課題/領域番号 |
22710002
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
石戸谷 重之 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 研究員 (70374907)
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キーワード | 物質循環 / 気候変動 |
研究概要 |
本研究では、森林内の大気中酸素(O2)濃度と二酸化炭素(CO2)濃度の観測から、陸上植物の呼吸、光合成量を分離して評価することを目指す。そのためO2濃度の高精度連続観測装置を開発し、岐阜県高山森林キャノピー内大気の観測に応用するとともに、チャンバー法によって採取した空気の分析によって森林生態系の呼吸、光合成活動に伴うO2:CO2交換比を明らかにする。H23年度は、O2濃度高精度連続観測装置の無人運転化に向けた改良、土壌チャンバーおよび葉チャンバーを用いたO2:CO2交換比の観測、およびO2濃度を用いた呼吸、光合成量分離評価理論の確立を行った。燃料電池をO2センサーとした連続観測装置は標準ガスの繰り返し分析において±1ppmの精度を実現しており、その除湿システムを、従来のエタノール寒剤を用いて除湿トラップを冷却する手法からスターリング式冷却機を用いた温度制御可能な冷却法に改良し、一定時間間隔で除湿トラップの流路を切り替えることにより、メンテナンスフリーでの連続運転を可能にした。また高山サイト現有の密閉法による土壌呼吸チャンバーと、新たに開発した通気法による葉チャンバーを用いた空気採取を行いて、土壌呼吸および光合成活動に伴うO2:CO2交換比の観測を開始した。得られたO2:CO2交換比と、2006年から試験的に継続してきたフラスコサンプリングによる高山森林キャノピー内外大気観測の結果を解析し、純粋な光合成によるO2:CO2交換比がカルビン回路と光化学反応から予測される1.00と等しいと仮定することで、高山森林内の呼吸、光合成量の試験的な分離評価を行った。得られた結果は過去の研究による報告値と整合的であり、O2濃度を用いた森林生態系呼吸、光合成量分離評価の有効性が示唆された。H24年度より高山サイトにおいてO2濃度連続観測を開始し、高精度・高時間分解能での呼吸、光合成量の分離評価を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではH23度から高山森林キャノピー内大気のO2濃度連続観測を開始する予定であったが、今後長期に亘って観測を継続するために、無人運転化により適した仕様に改造するために時間を要したことから、観測開始がH24年度からとなり、この点は予定より遅れている。しかし、H23年度より開始した土壌および葉チャンバー観測から得られたO2;CO2交換比と、過去の予備的な森林キャノピー内外大気の観測結果を用いて高山森林生態系における試験的な呼吸、光合成量の分離評価を試みた結果、森林炭素循環研究におけるO2観測の有効性を示すことができたことから、トータルの達成度としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度より高山森林キャノピー内外大気のO2濃度連続観測を開始し、H23年度までに確立した解析法に基ついて森林生態系呼吸、光合成の詳細な分離評価を行う。本解析の最大の誤差要因は、渦相関法により観測されているキャノピー内鉛直CO2フラックスに伴うO2:CO2交換比の推定であり、確立した解析法ではこの値を高度によるO2、CO2濃度差を利用した傾度法により推定しているが、今後、渦集積法の併用等による推定精度の向上について検討を進める。
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