主要な沿岸生態系(亜熱帯のサンゴ礁、アマモ場、マングローブ林および温帯の干潟)において、総生産量と総呼吸量を再評価する事が本研究の目的である。従来の測定法は多くの仮定の下、総生産量や呼吸量を求めているが、近年開発された溶存酸素の三種酸素同位体比測定を用いると今まで困難だった明呼吸量が正確に求められる。この明呼吸量の測定をもとに算出される総生産量や総呼吸量を、従来の炭酸系や酸素を用いる方法から求められる総生産量や総呼吸量と比較し妥当性を検証するとともに、正確に求められた総生産量や総呼吸量を規定する物理的・生物学的要因を解明する。 当該年度内に、サンゴ礁、アマモ場、マングローブ林において夏期、冬期の試料採取に成功した。また試料の分析に関しては、溶存酸素三種酸素同位体比、炭酸系、栄養塩、有機物に関して概ね終了した。得られた結果から大気-海洋間のガス交換の影響を差し引いて明条件と暗条件での呼吸量を算出したところ、明条件では暗条件よりも有意に高い呼吸が認められた。また呼吸量は夏季の方が冬季よりも大きい傾向が認められた。ただしそれ以外の環境条件(流速や塩分、有機物や栄養塩濃度、底生生物の種類や分布)と呼吸量や総生産量との関連は明確でなく、特に明呼吸を規定する要因までは明らかに出来なかった。今後全ての水質データを揃えて、より詳細な解析を行うことで、サンゴ礁やアマモ場、マングローブ林での総生産量や呼吸量を定量し、発表する予定である。
|