研究概要 |
近年Ruddiman(2003)によりEarly Anthropocene Hypothesis(原始人新世仮説)という仮説が提唱された.この仮説によると,約8000年前以降の火入れや農耕などの人の活動により温室効果ガスが排出され,数千年間にわたって徐々に温室効果ガスが大気に蓄積された.そしてその結果,ガスの温室効果により本来の地球システムでは氷期にあるべき数千年前~現在が温暖な気候となったとされている.最近の日本の研究では,約1万~7000年前頃に火入れや森林火災等のバイオマス燃焼が頻発していたことが明らかにされている.このような日本のバイオマス燃焼量増加はRuddimanの仮説と矛盾しない.しかし,日本でのバイオマス燃焼量の原因は,はっきりとは特定されていない.本研究では,バイオマス燃焼量変化の要因,特に後氷期(約1万年前以降)のバイオマス燃焼量増加要因の解明を目的とする.このため,近畿地方の約50万年間の間氷期・後氷期の堆積物について微粒炭(火入れや森林火災により発生する微細な炭)分析を行い,各間氷期の堆積物に含まれる微粒炭量の比較を行い,その結果に基づき,後氷期の微粒炭増加原因を検討する. 当該年度には,琵琶湖で掘削されたロングコアの最終氷期~現在に対応する堆積物の微粒炭分析を行った.大まかな傾向しか見ていないが,後氷期の初期に微粒炭が多くなる傾向が認められそうで,こうした傾向は井上ほか(2001)やHayashi et al.(2011)などの研究でも報告されており,後氷期初期に微粒炭の多い傾向は,琵琶湖堆積物の一般的な特徴である可能性が示唆された.このことは,同時期に琵琶湖周辺において森林火災もしくは山焼きなどの人為的な火が頻発していた可能性を示唆する. また,陸域の堆積物において完新世に微粒炭量が増加することを報告した.
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