研究概要 |
中国北京市・中国科学院地理科学与資源研究所(北京市中心部より北北東約15km)においてエアロゾル試料の採取を行った。エアロゾルを捕集したフィルターから超純水により水溶性イオン成分を抽出し、イオンクロマトグラフィーにより各種イオン成分の定量を行った。北京五輪開催に伴う環境規制が布かれた期間(2008年7/1-9/20)を『規制期間』とし、それに対応する比較対照期間(2005-2007,2009年7/1-9/20)を『対照期間』と定義すると、硫酸イオン濃度は対照期間に対して規制期間では41%減少し、これは硫酸イオンの前駆体物質であるSO2と同じ傾向を示した。一方硝酸イオン濃度は158%増加し、硝酸イオンの前駆体物質であるNO2とは異なる傾向を示した。規制期間および対照期間における後方流跡線解析を行った結果、北京市外部の他地域からの影響は特にないことがわかった。光化学反応により生成するオゾン等の酸化性物質の増加によって窒素酸化物の酸化が促進され、エアロゾル中硝酸塩濃度が増加した可能性が考えられた。 中国エアロゾル試料中の無機化学成分分析の効率化・省労力化を指向した観測・分析技術の開発として、米国標準技術研究所(NIST)より頒布されている粉末状標準試料であるSRM1649a(Urban Dust)を用いて、三次元偏光光学系エネルギー分散型蛍光X線分析におけるFP(ファンダメンタルパラメーター)法による元素の定量について検討を行った。具体的には、47mmφのニトロセルロースフィルター上に、0.15~4.19μgの範囲でSRM1649aを量り取り分析を行った。その結果、EDXRFの応答は実際のSRM1649a中元素含有量と良い相関を示し、特に遷移元素では高い直線性を得ることができた。
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