研究課題
中国北京市における過去約10年間の長期的な大気環境変動の実態解明調査を行った。具体的には、2000年から2010年にかけて北京市におけるエネルギー使用量は2倍になり、またこの間2008年にはオリンピック開催に向けて北京市独自の環境規制が行われたため、これらが大気環境に与えた影響を調査した。その結果、2005年から2009年にかけて中国北京市における大気中二酸化硫黄濃度と大気粉じん中硫酸イオン濃度は約30%減少した。これは、2000年代後半から急速に設置が進んだ排煙脱硫装置の効果が現れたためと考えられる。その一方で、1年を暖房期(11/15-3/15)と非暖房期(5/15-9/15)に区分した際に、大気中二酸化硫黄濃度は20-30%減少したが、大気粉じん中硫酸イオン濃度は暖房期20%、非暖房期50%と減少割合が季節によって異なっていた。大気粉じん中硫酸イオン濃度は大気中二酸化硫黄濃度の他に気温や相対湿度等の気象条件や酸化剤としてのオキシダント濃度に依存することが知られているが、本研究において検討した結果、北京市大気粉じん中硫酸イオン濃度の変化はオキシダント濃度の変化により強く影響を受けていることが考えられた。三次元偏光光学系エネルギー分散型蛍光X線分析法を用いて北京市大気粉じん中金属濃度を測定した。その結果、測定された全ての金属濃度において、'2006年から2010年にかけて年率3-16%の割合で減少していた。これらのことから、近年北京市においてエネルギー使用量自体は増加しているものの、種々の環暁規制の効果により、大気汚染物質濃度は減少傾向にあることが明らかとなった。
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Atmos.Chem.Phys.
巻: 12 ページ: 2025-2035
doi:10.5194/acp-12-2025-2012