平成24年度は湖沼に生息する菌類の中でも、植物プランクトンに寄生するツボカビに着目し、その生物量とツボカビを介した物質流(Mycoloop)を定量的に測定する方法の開発を試みた。 まずは培養系(珪藻Asterionellaと寄生性ツボカビRhizophydium)を材料に、ツボカビの量を定量PCR法により測定できるのかを調べた。これまでの成果からプライマーおよびプローブをデザインし、定量PCR法を行った結果、計数によるツボカビ数と定量PCR法により推定した生物量の間には有意な相関関係が見られ、定量PCR法によるツボカビ生物量の定量が培養条件下では可能となった。次に、ツボカビをミジンコに捕食させ、ミジンコ消化管内にあるツボカビを定量PCR法で検出できるかを実験的に調べた。その結果、ツボカビを捕食させたミジンコと捕食させなかったミジンコの間で定量PCR法から推定したツボカビ量に有意な差が見られ、定量PCR法が消化管内のツボカビを定量するにあたっても有効であることが示された。ただし、ミジンコの消化管のみと、ミジンコの生物体全てを測定する場合とで値に差が見られ、ツボカビの一部はミジンコの殻に付着している事が判明した。捕食されているツボカビ量を正確に量るためには、殻をはがし、消化管のみで測る必要があると示唆された。 これらの方法を印旛沼に適用した結果、ツボカビの量についてはプライマーの特異性が低かったため、正確には測定できなかった。しかし、ミジンコ中のツボカビ量を測定した結果、北印旛沼のミジンコ中には検出されなかったが、西印旛沼では検出され、ツボカビが野外でもミジンコに捕食されていることが明らとなった。ツボカビを介した物質流は場所や時期によってその重要性が変わる可能性が示唆された。
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