2010年9~10月に北西太平洋の混合域から亜熱帯域で海洋観測(淡青丸航海:鹿児島港-鹿児島港-長崎港)を実施した。海水をガラスボトルに入れてテフロンセプタムとアルミキャップで密封した。試料海水中のハロカーボン濃度をパージ&トラップ-ガスクロマトグラフ-質量分析計で船上測定した。研究船が航行中は表面海水を2~4時間毎に採取してハロカーボン濃度の水平分布を得た。定点ステーションでは表面から水深200mまで十層の海水を採取して、ハロカーボン濃度の鉛直分布を得た。特に、水温躍層付近の濃度変化を詳しく調べるため、躍層付近では5~10m間隔で採水した。黒潮流路を横切る観測ラインでは鉛直分布の日変化を調べるため、鉛直方向の採水を6時間毎に4回連続して行った。その結果、臭素系ハロカーボンの鉛直分布は亜表層に濃度極大が見られ、その分布形は僅かに日内変化した。 海水中のハロカーボン濃度を決める要因を明らかにするため、乱流計測、プランクトン種・量の計測を共同(東京大学大学院農学生命科学研究科と東京大学大気海洋研究所による)で行った。それにより、亜表層に蓄積された生物起源ハロカーボンが表層に供給される量、表層における植物プランクトンによるハロカーボンの生成量を定性的に明らかにすることが期待される。 本航海では表面海水をガラスボトルに密封し、現場の太陽光に照射する培養実験を行った。培養開始から12時間と7日後に培養海水中のハロカーボン濃度を測定したところ、臭素系ハロカーボンの濃度について有意な変化は見られなかった。植物プランクトンが増殖するときに臭素系ハロカーボンが放出されると考えられているので、今後は栄養塩を添加してプランクトンの成長を促進させる必要がある。
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