現存のバクテリアの2次生産測定は、放射性同位体を用いた手法が使われているため我が国では放射同位体の使用が制限されており、バクテリアの2次生産はその重要性にもかかわらずほとんど報告例がないのが現状である。1990年代にチミジンの類似物質であるプロモデオキシウリジン(BrdU)を使用する手法が確立されたが、それでも現存の方法は、蛍光標識したBrdUの蛍光強度を濃度に変換する時に放射性同位体で標識されたBrdUが必要とされている。そのため本研究では、BrdUの蛍光を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の蛍光検出器を用いて測定する方法の開発を試みた。また従来法との比較のため、霞ヶ浦湖水を用いた培養実験を行い、バクテリアの2次生産の測定を行った。 HPLCを用いたBrdUの検出についてであるが、通常の蛍光検出器を用いてBrdUの標準物質の測定は可能である事が分かった。次にバクテリアが取り込んだBrdUをDNA中から抽出し、様々な条件下でBrdUの単離を行ったが、HPLCでは検出できなかった。その理由として、(1)DNA中からの抽出でBrdUが単離されなかった、(2)BrdUの量が少なくて検出限界以下だったと考えられる。そこで蛍光検出器ではなく、安定同位体^<13>CのBrdUを用いてHPLC-MS分析器を使用し、安定同位体BrdUの検出を行ったところ検出可能であった。これにより安定同位体を使って従来の化学発光測定方法でバクテリア内に取り込まれたBrdUの測定が可能になった。 次に霞ヶ浦湖水を使った培養実験の結果であるが、バクテリアの2次生産は霞ヶ浦では非常に高いことが分かり、湖水生態系の炭素循環において非常に大きな役割を果たしていることが分かった。
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