研究概要 |
本年度は、瀬戸陶土層と同層準が露出する常滑層(愛知県常滑市)において、ダイオキシン類濃度分布調査を行った。粘土堆積層中のダイオキシン類実濃度範囲は、1200~8700 pg/gであり、その99%以上がPCDDsで構成された。同露頭で採取した大谷火山灰中の濃度は83 pg/gであり、粘土堆積層中濃度と比較して極めて低かった。常滑層についても炭化物に富む堆積層から比較的高濃度のダイオキシン類が検出され、濃度分布及び異性体組成ともに瀬戸陶土層の結果と類似する。同地域表層土壌の示すダイオキシン類濃度の鉛直分布と組成の比較により、堆積層中から検出された比較的高濃度のダイオキシン類は、表層からの汚染によるものではなく、異なる供給源をもつことが示唆された。 ダイオキシン類は木節粘土や亜炭など炭化物に富む層に比較的高濃度で存在することから、埼玉県の仏子層(鍛冶丘陵)及び楊井層(荒川中流)に狭在する亜炭層についても調査を行い、これまでの調査地点と同様の結果が得られた。このように人為発生源の影響が極めて小さく、堆積環境の類似するすべての堆積層において一様の結果が得られたことから、これらの特徴はダイオキシン類天然生成を裏付ける一つの証拠といえる。 カオリン粘土中に存在するダイオキシン類の起源を推定するため、カオリン粘土中で突出するオクタクロロジベンゾ-p-ジオキシン(OCDD)とOCDDを高濃度で含む人為発生源試料(ペンタクロロフェノール:PCP, 焼却灰)について、OCDDの炭素安定同位体組成を比較した。カオリン粘土中OCDDのδ13C値は-25.8‰であり、PCP(-32.4‰)及び焼却灰(-22.8‰)と異なる分布を示した。さらに、粘土中のバルク炭素とOCDDのもつ炭素同位体組成は一致することから、これら粘土中に存在するダイオキシン類の炭素源は、カオリン粘土中の有機物に由来すると示唆された。
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