研究課題
本研究の目的の一つは、南極氷床中のマツ属花粉1粒ずつをDNA分析し、種を同定したのち、その分布域をもとに花粉の起源を推定することにある。従来の花粉の分類は顕微鏡による形態観察をもとにおこなわれていたため、マツ属花粉の場合は、属よりも下の階級で分類することは困難であった。昨年度は予備実験として、ロシアの氷河から採取した雪氷試料をもちいて、そこに含まれるマツ属花粉1粒ずつをPCRし、従来属レベルで留まっていた分類を節レベルでおこなうことを試みた。PCRは、葉緑体DNA上の遺伝子領域(rpoBの一部、149bp)を増幅対象とした。計105粒の花粉で実験をおこなったところ、8粒から塩基配列を取得することができた。マツ属の下位の階級には、2亜属、4節、17亜節、約111種が存在する。本研究で取得した塩基配列は、4つの節(Quinquefoliae・Parrya・Trifoliae・Pinus)のうち、全てQuinquefoliae節のものであった。ベルーハ氷河周辺には現在、Quinquefoliae節に属するシベリアマツ(Pinus sibirica)が分布しており、この一致は、ベルーハ氷河に飛来する花粉が周辺に分布するマツ属起源であることを示唆した。現在、一階級下の亜節までの分類を目指して研究を進めている。マツは種によって分布域が大きく異なるので、亜節での分類が可能となればマツ花粉の起源を少なくとも大陸レベルで推定することが可能となる。
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