研究概要 |
日本では、2006年9月1日「労働安全衛生法施行令等の改正」の施行によって石綿の全面禁止が導入された。しかし、中国、タイ等のアジア諸国においては、石綿の使用量は増加している。本研究は、日本を含め、アジア諸国で簡易・迅速に石綿を分析することが出来る手法の確立を目的としている。位相差・分散顕微鏡を用いる分散染色法では、1試料に対して屈折率の異なる浸液毎に標本を複数作製し、複数の標本を観察し、石綿の分散色と形から識別を行っていた。分散染色法で使用する浸液が温度の変化に伴って屈折率も変化する2)ことに着目し、標本の温度と分散色の関係から、1試料から1つの標本のみで石綿の識別を行う方法について検討を行った。 研究3年目の本年は、分散染色法で作製した産地別クリソタイル6種類(浸液nD25℃=1.550)と、アモサイト、クロシドライト(浸液nD25℃=1.680、1.700)の標本の温度を25±5℃で変化させ、約1℃間隔にデジタル写真の撮影を行った。 デジタル写真中における石綿の分散色を「色度計測ソフト(RGBreader、窪田悟教授開発(成蹊大学理工学部 エレクトロメカニクス学科))」を使用して、解析を行った。石綿の分散色をRGB(red,green,blue)色度図(以下、色度図と記す)上での、相当するxy座標の位置を算出した。25±5℃の範囲で、約1℃間隔に撮影したデジタル写真の分散色を、図3のように色度図上のxy座標に変換する。得られたxy座標から光源を通る直線を引き、直線と交わった位置より、分散色の波長を算出する。分散染色法で作製した標本の温度変化に伴って、波長がどのように変化するかを確認した。 得られた標本の温度と、RGB色度図上での石綿の分散色の変化の関係から、石綿の種類を識別する方法について検討を行った。
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