研究概要 |
メタンは主要な地球温暖化ガスであり,二酸化炭素と同様に近年大気中濃度が増加しつつあるガスである。そのため,地球規模でのメタンの循環プロセスの解明は重要な研究課題である。従来微生物による嫌気的メタン酸化プロセスは主に海底堆積物中で生じていることが知られていた。特に嫌気的メタン酸化古細菌の報告はこれまでほぼ海底堆積物に限られており,陸域環境での実態は明らかになっていなかった。平成22年度までの研究により,関東平野の地下圏内において,微生物による嫌気的メタン反応が生じていること,またそれを担う微生物が,海底に存在する嫌気的メタン酸化古細菌群と系統的に異なることを分子生物学的手法により明らかにした。さらに,嫌気的メタン酸化反応に関与すると考えられるmcrA遺伝子についてもこれまで知られていたものと異なるものが存在することを明らかにした。 平成23年度は,このようなこれまでの研究成果をまとめ,淡水に適応した新たな嫌気的メタン酸化古細菌グループ(ANME-la-FW)として国際誌(Environmental Microbiology)に発表した。また研究の次の段階は,実際にどの程度嫌気的メタン酸化反応が陸域地下圏におけるメタンの循環に影響しているかを定量的に評価することである。そこで,新たに新鮮な試料を掘削により採取し,実際の現場におけるメタン生成ならびに嫌気的メタン酸化活性の測定に着手した。また,淡水に適応した嫌気的メタン酸化古細菌グループの様々な生理学的特性を解明するため,様々な条件を設定した培養試験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな試料採取のための掘削調査は,現場の事情により当初予定より遅れたものの,無事終了し,現場活性測定試験ならびに培養試験を開始することができた。またこれまでの研究成果をとりまとめ,順調に国際誌に受理された。
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