今年度は8月と2月の二度の現地調査に加え、国内関係機関との度重なるセミナーによって、以下の3点について研究を行った。1.サンプル属性と情報リテラシー水準、2.環境情報に対するアクセスビリティと環境意識、3.環境リテラシーモデルのひな形。 1.サンプル属性と情報リテラシー水準 これまので予備調査では、TV/新聞報道、インターネット情報アクセスビリティの向上だけでは満足していないことが明らかとなっている。このことは、現場感覚に近い活用可能な環境情報が提供されていないという点が原因であった。本格調査では、サンプル属性による強いバイアスが観察された。特に地方農村部においては、アクセスできる環境情報が政府に限定されており内容も断片的であった。このことは、生業に活用できる環境情報が多様かつ複雑であるという情報発信元の課題と、環境情報に対してきわめて受動的な受信元の課題に大別できる。 2.環境情報に対するアクセスビリティと環境意識 環境情報に対するニーズは、アクセスビリティと比例的に高まる。しかしながら、現地住民に有用な環境情報は、彼自身による積極的な関与がないと得る事が難しい。すなわち受動的なままでは、価値のある情報を得る事ができない。この状況は、一種のジレンマを形成し、環境情報のアクセスビリティと環境意識の負のサイクル観察された。 3.環境リテラシーモデルのひな形 以上のような現地調査を踏まえ、設計科学のアプローチから、環境情報、環境利用価値、アクター・ファクターの3側面から「環境リテラシー」を評価し、これを向上させる要因の位置づけを行うためのモデル(ELM)の開発に着手した。この取り組みは、国際開発学会でも評価され、2010年度JASID-COEを受賞している。
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