研究課題/領域番号 |
22710039
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山下 哲平 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (30432727)
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キーワード | ベトナム・メコンデルタ / 環境情報 / 環境リテラシー / 農民 / 環境教育 / 東アジア(極東シベリア) |
研究概要 |
今年度は、8月および9月にサバ共和国、ベトナム・メコンデルタ、モンゴルにおける現地調査を行った。現地調査では、農民、主婦、学生(主に中高生)を対象に環境意識に係るアンケート調査を実施、さらに彼らの視点から環境問題を捉え直す「環境リテラシー」のアプローチを進めた。 1.「環境リテラシー」の概念は、当該研究代表者がサブ・リーダーを務める総合地球環境学研究所IS研究(平成24年度よりFS研究)において『環境リテラシーは問題意識に基づき環境情報を希求、咀嚼し行動の方向性を決める暗黙知的な適応能力であり、生活史、他者との相互作用、社会規範、直面する環境問題などによって多様に顕在化する』ものとして、定義化に到達した。 2.ロシア連邦サハ共和国の現地調査では、農民と学生に対するアンケート調査から、高い環境意識と環境情報や環境技術に対するニーズの高さが確認された。その上で、「科学情報と技術」と「技術普及」に関わる新しい課題が浮き彫りとなり、その橋渡しの概念として「環境リテラシー」のアプローチを文理社の複合的な共同によって検討することが確認された。 3.ベトナム・メコンデルタの現地調査では、急激に変化する社会経済環境に適応する農民の環境意識と行政の対応を調査し、経済成長と自然環境状況への配慮という2つの柱の問にあるギャップを確認した。 4.モンゴルの現地調査では、環境に係る環境科科学情報やモンゴルにおける研究機関の活動を一般市民に伝える環境新聞(環境ソニン)や市民公開講座(座談会)を通じて、脆弱な自然環境条件、変容を続ける社会経済状況の中で、「環境リテラシー」のアプローチに対する社会的要請が高いことが明らかとなった。 以上の研究成果に基づき、総合地球環境学研究所FS研究や基盤研究Bなどの研究代表者が参画している関連研究と共同し、「環境リテラシー」アプローチの先鋭化に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、若手研究Bとして個人的な活動範囲で収束する予定であったが、平成22年度に国際開発学会JASID-COEを受託、平成23年度に総合地球環境学研究所IS研究、平成24年度総合地球環境学研究所FS研究へと発展的に拡大している。そのため、対象フィールドもベトナム・メコンデルタに限らず、ロシア・サハ共和国、モンゴルに広がり、学問分野も人文・理系の協力者が集まりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究で、社会変革や自然環境の急変に晒されている地域の環境問題に「人びと」や「地域社会」が対処している(していない)様々な事例を汲み上げ、環境リテラシーを多様に表象させる必要がある。さらに、科学者側からの能動的な情報提供や提言、実践などによって「人びと」の行動変容を促すことで環境リテラシーの双方向的な向上を試みる。これらの活動は、幅広い分野の研究協力社の参画が不可欠であり、本研究補助金申請期間にとらわれない長期的かつ広い視点に立った戦略的な研究の推進が求められる。
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