研究課題
本研究の目的は、この社会的受容性を大きく左右する市民のリスク認知に多大な影響を与える日本のマスメディア報道において、炭素隔離技術がどのように報道されているのかを定性的、定量的に明らかにすることである。この意義としては、同技術を大規模に導入する場合の試金石である社会的受容性に関する知見を創出できることが挙げられる。平成22年度は基本的に新聞報道のデータを収集し、日本の炭素隔離技術の政策決定プロセスやすでに実施されたデモンストレーションプロジェクトを対象とした背景分析を行った。デモンストレーションプロジェクトに関する分析の結果、デモンストレーションプロジェクトの関係アクターの間のコンセンサス達成方法、プロジェク、トのフレーミングプロジェクトのガバナンス構造、そして実施国の文脈が学習プロセスを形成していることが明らかになった。特に、新聞報道の分析との関連で注目するべきは、プロジェクトの支配的フレーミングとしてテクノクラシー・フレームが同定されたことである。日本の政策決定プロセスに関する分析の結果、同プロセスはIPCC特別報告書の知見を取り込んでおらず、支配的なフレームとしてはテクノクラシーが同定された。この結果、日本における炭素隔離技術のデモンストレーションプロジェクトでも、政策決定プロセスでもテクノクラシー・フレームが同定されたため、同新聞報道でもテクノクラシーのフレーミングが同定されるものと予測される。そうなった場合には、基本的に日本社会もテクノクラシーの考え方を共有していないと、社会的受容性は著しく低くならざるを得ないという政策的含意が導かれることになる。
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Global Environmental Change
巻: Vol.21、No.2 ページ: 358-367
巻: 21巻2号(forthcoming)