22年度は、(1)既往研究のレビューと(2)兵庫県豊岡市での現地調査を中心に研究を進めた。 (1)では、主に環境経済学で議論されてきた、資本ストックの維持増進=持続可能性とするアプローチだけでなく、社会的相互作用をも視野に入れた持続可能な発展論が、仮説形成において重要であることが明らかになってきた。特に、理論的研究も近年注目を集める持続可能な発展の移行理論を参照することにより、持続可能性を高める社会システム革新過程のいくつかの要件を確認することができた。(2)では、第一に自然環境ストックの変容を中心に、主に兵庫県但馬県民局、兵庫県立コウノトリの郷公園、NPO等での資料収集と聞き取り調査を行った。その結果、これまでに様々な主体による政策と取り組みによって環境ストックの再生、創出、価値付けの変容が進められてきた実態が明らかになった。第二に、豊岡市内でコウノトリ育む農法に取り組んでいる地区を中心に、取り組みの経緯、成果、課題について実態調査を行った結果、地区ごとの自然的・社会的条件によって自然環境ストックの活用状況が異なることが推測された。これらの違いに影響を与えると考えられる諸要因とステークホルダーの社会的相互作用過程の詳細な分析と、理論的研究から得た知見を総合することにより、環境ストックの変容過程からみる持続可能な地域発展の理論的枠組みの提示が可能になると考えられる。
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