本研究課題の目的は、持続可能な地域発展の評価モデルを提示することである。本年度は、研究成果のとりまとめに向けて、主に以下の研究を実施した。 (1)研究成果の中間発表 『持続可能な地域実現と地域公共人材-日本における新しい地平-』(平成23年5月刊行)に掲載された「「地域」の形成と地域公共人材」(共著)は、本研究課題の中間成果報告であり、豊岡市におけるコウノトリ野生復帰におけるキーパーソンを中心とするビジョンの生成過程を分析した。また、環境経済・政策学会大会(平成23年9月、長崎大学)において、「環境ストック概念を用いた持続可能な地域づくりの分析-兵庫県豊岡市におけるコウノトリ野生復帰を素材にして-」と題して研究報告を行った。豊岡市におけるコウノトリ野生復帰関連政策とその結果に関する網羅的把握のために行った文献調査と聞き取り調査の結果を整理し、環境ストック変容を導いてきた統合的政策ビジョンの存在について論じた。これらの中間的研究成果は、主に豊岡市の政策レベルでの環境ストックの変容過程を明らかにした。 (2)持続可能な地域発展の評価モデルの検討と最終報告論文執筆 持続可能な地域発展の評価モデルを構築するには、(1)に加え、環境ストック変容をもたらすと考えられる、よりミクロな社会的相互作用が、持続可能な地域発展の過程においてどのように機能するかを検討する必要があると考えられた。そこで、コウノトリ育む農法に取り組む農業者への聞き取り調査記録から、育む農法の実践と改善を促す背景要因等について分析し、人材・社会関係・文化といった主体的な機能を持つ環境ストックと、自然-人工ストックとの相互作用を媒介する要素について検討した。その結果をもとに、環境ストックの投資-再投資サイクルを媒介する学習などを含む持続可能な地域発展の理論的な枠組みを構築した。これらの成果は、査読付き国内論文雑誌に投稿中である。
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