1.基質の高効率な作成方法の確立 部位特異的損傷乗り越え複製アッセイ(細胞内TLSアッセイ)の基質となる、化学合成損傷塩基を含む閉環状プラスミドの高効率な作成方法を検討した。その結果、一本鎖プラスミドDNAに損傷塩基を含むオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、DNAポリメラーゼによるDNA合成とライゲーションを同時に行うことで、簡便かつ非常に効率よくcccDNAを得る方法を確立した。 2.細胞内TLSアッセイを用いた6-4PPに対するTLS効率と正確さの解析 上記1.の方法により作成した基質を用いてさまざまなTLSポリメラーゼ欠損細胞でアッセイを行った。その成果の一つとして、ミスマッチ修復因子の一つであるMsh2欠損細胞では6-4PPの3'に対する誤った塩基の取り込み頻度が有意に上昇することから、ミスマッチ修復機構が損傷乗り越え複製と共役して紫外線誘発突然変異の抑制に働くことを明らかにした。この結果は共同研究者であるオランダのグループとともに現在投稿準備中である。 3.TLSポリメラーゼ欠損細胞の紫外線感受性および突然変異誘発頻度解析 TLSポリメラーゼ欠損細胞を用いた紫外線感受性および紫外線誘発突然変異頻度解析により、これまで"誤りがちな"TLSポリメラーゼと考えられてきたPolκが紫外線誘発突然変異の抑制に働く可能性を見出し、第33回日本分子生物学会年会・第83回日本生化学会大会合同大会(BMB2010)にて学習院大学理学部の学生と共同で研究発表を行った。
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