研究課題
本研究では紫外線により誘発されるDNA損傷の一つである6-4光産物(6-4PP)の損傷乗り越え複製(TLS)機構と、それに伴う突然変異誘発の分子機構の解析を目的として、さまざまなTLSポリメラーゼ欠損細胞を用いて6-4PPの細胞内高感度損傷乗り越え検出アッセイ(細胞内TLSアッセイ)を行った。その結果、損傷に対して直接塩基を取り込むinserterとして働く主要なTLSポリメラーゼであると考えられているPolη、Polι、Polκをそれぞれ欠損した細胞では6-4PPの3’Tに対する誤った塩基の取り込み頻度に差があるものの、全体としてTLS活性はほぼ同程度であった。さらに、意外にもこれらのinserterをすべて欠損した三重欠損細胞においても野生型細胞とほぼ同程度の6-4PPのTLS活性がみられ、細胞内ではこれらのTLSポリメラーゼ以外に複製ポリメラーゼ等他のDNAポリメラーゼが6-4PPのTLSに関わっている可能性が示唆された。一方でPolζ(ゼータ)の活性サブユニットであるRev3欠損細胞ではTLS活性が消失することから、Polζが6-4PPのTLSを完了するための伸長反応に必須のextenderであることが示された。そこで Polζによる突然変異誘発メカニズムについてさまざまな配列中の6-4PPを用いて解析したところ、損傷の次の塩基に対して高い頻度で突然変異を引き起こすこと、およびその変異頻度はDNA損傷前後の塩基配列の影響を大きく受けることが明らかとなった。さらに、ミスマッチ修復因子の一つであるMsh2欠損細胞では6-4PPの3'に対する誤った塩基の取り込み頻度が有意に上昇することから、ミスマッチ修復機構が損傷乗り越え複製と共役して紫外線誘発突然変異の抑制に働くことが明らかとなった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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