昨年度は、大きさの異なる三次元細胞組織を構築するためのテンプレートを開発し、間接的変異原アフラトキシンB1に対する応答の大きさ依存性を評価できたものの、球形の三次元細胞組織を構築することは困難であった。本年度は、球形の三次元細胞組織を効率よく形成させるため、ハニカム構造のマイクロウェルを有するポリジメチルシロキサン(PDMS)シートを作製した。その表面をタンパク非接着性のMPCポリマーでコートした後、成熟ラット初代肝細胞を播種し、PDMSシート側から細胞へ酸素を供給しながら培養すると、三次元細胞組織を2日間で構築させることが可能であった。マイクロウェルの大きさを変えることにより、直径約35-300μmの大きさの球形の三次元細胞組織を構築できることに成功した。単位面積当たりに構築できる三次元細胞組織の個数は、前年度のテンプレートよりも約2桁以上大きくできた。また、直径110μmの成熟ラット肝細胞の三次元細胞組織の酵素チトクロムP450 1A1/2による肝代謝機能は、直径35μmのものよりも約2倍高まることが明らかになった。アフラトキシンB1に対するEC50を比較したところ、前者の三次元細胞組織は後者のものよりも約1桁低濃度側にシフトした。一方、三次元細胞組織に色素を取り込ませて細胞応答の評価を行っていたものの、三次元細胞組織の大きさが大きくなるほどその中心部分に色素が入りにくくなっている問題が明らかになった。そこで、酸素感受性の発光色素白金オクタエチルポルフィリン(OEP)をマイクロウェルの底面にコートしたガラス製の呼吸活性評価プレートの開発も試みた。マイクロウェル内で肝ガン細胞株Hep G2の三次元細胞組織を培養したところ、OEPの発光強度から、細胞組織の呼吸活性能を評価できた。また、呼吸活性を阻害するシアンを、発光強度の減少量から検出できることも明らかになった。
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