本研究では、三次元細胞凝集体の大きさを制御し、生体内での主要な毒性発現メカニズムと同質の応答を示す凝集体の最小サイズを明らかにすることを目的とした。マイクロウェル構造を配備したポリジメチルシロキサン(PDMS)テンプレートを作製し、マイクロウェル内でヒト肝ガン細胞株Hep G2の凝集体を形成させた。マイクロウェルの大きさを調節することにより、細胞凝集体の大きさを制御した。薬物代謝酵素シトクロムP450 1A1/2(CYP 1A1/2)の活性を調べたところ、直径200μm・高さ約60μm以上の大きさの凝集体の活性は、直径63μm・高さ約70μmの凝集体のものよりも3. 5倍高くなった。また、CYP 1A1/2に代謝されてより強い毒性を示すアフラトキシンB1(AFB1)を凝集体に暴露したところ、直径200μm以上での凝集体の用量作用曲線は、直径63μmのものよりも1桁低濃度側にシフトした。また、ラット成熟初代肝細胞でも同様の検討を行ったところ、直径110μmの球状の凝集体のAFB1に対する用量作用曲線は、直径35μmの球状のものよりも1桁低濃度側にシフトした。一方、酸素感受性の発光色素白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)をマイクロウェルの底面にコートした、凝集体の呼吸活性を非侵襲的に評価可能なガラス製プレートの開発も試みた。マイクロウェル内で肝ガン細胞株Hep G2の三次元細胞組織を培養したところ、PtOEPの発光強度から、細胞組織の呼吸活性能を評価できた。これらのことから、本方法論を用いることにより、生理学的に同質の応答を示す各種臓器由来の細胞凝集体の大きさを決定できるものと期待される。
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