研究概要 |
徳島県を流れる吉野川流域圏の河川水7箇所,事業所9箇所(一般事業所と下水処理施設)およびその放流先河川6箇所,道路流出水1箇所について採水をおこない,それぞれ,2から4回にわたって総毒性を調べた。総毒性は米国環境保護庁(USEPA)の総毒性試験(Whole Effluent Toxicity:WET)の亜慢性試験法に準じて,甲殻類のニセネコゼミジンコ(Ceriodaphnia dubia)の繁殖阻害,藻類のムレミカヅキモ(Pseudokirchneriella subcapitata)の生長阻害,魚類のゼブラフィッシュ(Danio rerio)もしくはヒメダカ(Oryzias latipes)の胚・仔魚期の亜慢性毒性試験を実施した。その結果,一般事業所や下水処理施設のほとんどでミジンコもしくは魚類に対する強い毒性影響(放流先で影響が検出されなくなるまでに必要な希釈倍率であるTUが10を上回る)が検出された一方で,藻類に対する毒性影響が検出された事業所や下水処理施設は少なかった。協力が得られた事業所については,毒性の原因として無機系の物質がほぼ同定された。しかしながら,実際に放流先で毒性影響が検出されたケースはほとんどなかった。栄養塩類等による増殖効果の結果,藻類に対する毒性影響がマスキングされている可能性が指摘された。河川水についてもほぼ同様にミジンコ・魚類の検出率が藻類よりも高かったが,毒性影響が検出されたのは都市部の汚染度が高い河川の一部に限られた。一方,ノンポイント汚染の一つである道路流出水に対する毒性影響試験を実施したところ,ミジンコや藻類に対して強い毒性が検出され,その一部がマンガンや亜鉛などの重金属による可能性が高いことがわかった。
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