本年度は、昨年に引き続いて吉野川流域圏の未処理ならびに処理した生活排水が多く流れ込む河川や吉野川本川の環境基準点(高瀬潜水橋)ならびに幹線道路の流出水などののべ10地点程度について採水を実施したほか、さらに農業排水を含む河川や用水路のべ5地点程度を追加して採水をおこなった。採水した水については、実験室に持ち帰り、できるだけ速やかに水生生物3種(ムレミカヅキモ、ニセネコゼミジンコ、ゼブラフィッシュ)の亜慢性試験に供した。その結果、藻類の試験において環境省での検討試験法に合わせてろ過を実施したところ、増殖促進された試料は減って、道路排水では非常に強い毒性が、また夏季の河川水や農業排水、生活排水の流れ込む河川でもほぼ全ての時期において弱いながらも増殖が阻害された。ミジンコについては、ほとんどの地点で繁殖阻害は検出されなかったが、山部の都市河川や道路排水では致死および繁殖に影響が検出された。ゼブラフィッシュの胚の艀化や仔魚致死に対しても、生活排水の流れ込む河川で毒性影響炉検出された。生活排水を含む河川については界面活性剤や抗菌剤の寄与が比較的大きく、浄化槽等の汚水処理設備の整備や適切な維持管理が重要であることが示唆された。農業排水については、除草剤濃度の測定を一部実施したが、その関与は明らかではなく、今後は殺虫剤等の寄与についても合わせて検討を進めていく予定である。道路排水については、重金属類に比べて、PAHs等の疎水性有機物質の関与が示唆されたほか、その現場での低減策の必要性が示唆された。本研究では、吉野川流域圏における、毒性発生源や負荷に関する基礎情報が集まったので、今後はより広範な流域に適用可能で体系的な総毒性評価をベースにした毒性同定・分画、ならびに効率的な毒性低減策の策定に活用していければと考えている。
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