研究概要 |
本研究の目的は,DNA付加体1分子で起こるチミジンキナーゼ(TK)遺伝子変異を簡易に検出できる復帰突然変異解析系を構築することである。そして,遺伝毒性発癌物質の低用量域における閾値の形成機構を最終的に明らかにすることを目標とする。本解析系においてターゲティングベクターを細胞に形質転換する際に,その導入効率が毎回異なる可能性がある問題に関して,緑色蛍光タンパク質の発現ベクターを導入し,蛍光を発する細胞をカウントすることにより形質転換ごとの違いを補正できることを確認した。次に,一塩基置換でTK遺伝子が変異する既知の自然突然変異スペクトラムデータをもとに,エキソン5内の2カ所の塩基部位(a)(b)について,それぞれ陽性および陰性を示すコントロールターゲティングベクターを作製し,どちらの部位がよりTK遺伝子が変異しやすいかを比較した。その結果,塩基部位(a)および(b)の各陽性ベクター導入時のTK遺伝子変異頻度は,陰性ベクターのそれよりも7倍および15倍それぞれ高かった。よって,塩基部位(b)の方がTK遺伝子を変異させるのに適していることが分かった。次年度は,その部位にDNA付加体を1分子含むターゲティングベクターを導入させ,ターゲティングミュータジェネシスによる復帰突然変異解析系を確立する予定である。
|