研究概要 |
低用量暴露の影響を解析するために,低用量域へ外挿する用量依存的 な相関性を調べる古くからの手法に関して,我々は限界があると考えている。そこで,我々は 低用量暴露のモデルとして,ヒトリンパ芽球細胞株TSCER122(TK6 由来)のチミジンキナーゼ 遺伝子のエキソン5内にDNA 付加体1分子を導入し,簡易に遺伝子変異誘発頻度を解析できる 実験系を確立した。その結果,付加体が1分子でもDNA 上に形成すれば遺伝子変異が起きるこ とを明らかにした。これは遺伝毒性発がん物質には閾値が無いという従来からのリスク評価法 をサポートしている。しかしながら,この実験系は,DNA 修復機能が正しく働いていないなど の不明な点が多く,データの蓄積がさらに必要である。すなわち,閾値の存在を確認するには, DNA 修復遺伝子を改変させた細胞株を用いて,付加体1分子が起こす遺伝子変異誘発機構をさ らに研究する必要がある。
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