研究課題/領域番号 |
22710072
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
寺田 昭彦 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 講師 (30434327)
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キーワード | 排水処理 / 生物学的窒素除去 / 嫌気性アンモニア酸化(アナモックス) / 好気性アンモニア酸化 / 放射線グラフト重合 / 細菌付着 / バイオフィルム / スタートアップ |
研究概要 |
アナモックス細菌を利用した排水処理プロセスは省エネ・低コストの観点から従来法に替わる窒素除去技術として注目されている。しかし、この細菌の増殖速度は極めて遅く、スタートアップが技術的課題である。本研究では、オンサイト・短期間でアナモックス反応を立ち上げ可能な技術の開発を目指す。今年度は、アナモックス反応の前段を担うアンモニア酸化細菌およびアナモックス細菌のスタートアップ短縮を目指し、細菌細胞の付着を静電的相互作用により促進させる担体開発を行った。ポリエチレン(PE)製不織布担体に放射線グラフト重合法を適用し、エポキシ基を有するグリシジルメタクリレート(GMA)をグラフトした。その後、ジエチルアミン(DEA)溶液に浸漬させ、GMAのエポキシ基をジエチルアミノ基に転換した。アンモニア酸化細菌を含む硝化細菌の集積汚泥にPE、GMA、DEAの不織布を浸漬させたところ、2日後のアンモニア酸化細菌付着量はPEで10^3cell/carrierであったの対し、DEAの不織布はDEA電荷密度1.77 mol/kgにおいて最大10^8cell/carrierに達し、初期付着量は10^5オーダー高くなることがわかった。また、長期培養期間後の不織布表面積当たりのアンモニア酸化速度は、PEの不織布と比較してDEAは最大で2.9倍高いことが示され、不織布の化学修飾の有効性を示した。次に、PBおよびDEAの不織布担体を上向流カラムに充填し、アナモックス反応の立ち上がり試験を行った。下水処理場の活性汚泥を種汚泥として、無機人工排水を無酸素条件で連続供給したが、アナモックス反応の立ち上がりは不織布担体の化学修飾の有無による有意な差が見られなかった。担体表面の化学修飾の影響はアナモックス細菌の優占率が小さい種汚泥の場合は効果が小さく、アナモックス細菌の生理活性を向上させる機能添加が必要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アナモックスバイオリアクターの立ち上げにおいて、アナモックス細菌の活性が低下する問題に直面し、活性回復に時間を要した。しかしながら、今後の生理活性向上に向けた検討に必要なバイオマス量を確保することができたため、今後の研究は迅速に進むことが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの試みてきた、アナモックス細菌の初期付着を促進させてスタートアップの時間短縮を図る戦略は、アナモックス細菌数が少ない系においては適用が困難であることが示唆された。したがって、アナモックスの生理活性を向上させることが可能であると報告されているアシルホモセリンラクトンを積極的に利用することによるアナモックスプロセスのスタートアップ短縮を目指す。この化合物によるアナモックス反応速度増大の検討を行った後、この化合物を除放可能な材料を開発する。既にこの材料開発には取り組んでおり、材料の化学修飾のための準備は整っている。
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