研究概要 |
自動車分野をはじめ,エレクトロニクス分野等における電子機器デバイスの高出力化に伴い,放熱対策が重要な課題となっている.従来の放熱性プラスチックは,金属あるいは炭素の粉や繊維を高充填するため,比重の増加,成形加工性や柔軟性の低下といった問題があり,さらに省資源化の観点からも好ましくない. 本研究では,高熱伝導化を達成するために,複数の材料を複合化することで,単一材料では得られないトレードオフ機能を発現する新規有機/無機ハイブリッド材料の創製とその特性評価について検討を行なった. 熱伝導性を付与する無機充填材として窒化物を,有機材料として樹脂A及び樹脂Bの2成分に充填した有機/無機ハイブリッド材料の調製を小型2軸混練機にて行ない,その構造制御とその熱伝導性の評価,特に窒化物フィラー充填量がハイブリッド材料の熱伝導率および力学特性に及ぼす影響について検討を行った。得られた結果を以下に示す(1)窒化物充填ハイブリッド材料の成形加工プロセスの確立:走査型電子顕微鏡観察の結果,熱伝導性フィラーである窒化物が樹脂中(2成分系)で十分に分散し,かつ,ある程度の凝集網目構造の形成が観察でき,エネルギー分散形X線分光分析の結果,窒化物が樹脂A相へ選択的に分散することが明らかとなった.(2)窒素酸化物充填ハイブリッド材料の熱伝導性の評価:熱伝導率測定の結果,窒素酸化物充填量70wt%(40vo1%)で最大値2.37W/mKを示した.(3)窒化物充填有機/無機ハイブリッド材料の力学特性の評価:三点曲げ試験の結果,窒化物充填量の増加に伴い,曲げ弾性率は約3GPa(70wt%充填)と高い値を,反対に曲げ強度は約15MPaと低い値を示し,未充填材料と比較して,ハイブリッド材料の柔軟性は低下した.
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