光触媒は紫外線を照射することにより、環境中の汚染化学物質を分解することが可能である。代表的な光触媒は酸化チタンがよく知られているが、最大の欠点の一つは紫外線しか吸収・利用できないことである。本研究では、可視光領域を吸収・利用できる酸化タングステン粒子自体に着目し、ナノ構造を制御することによる高活性光触媒の創成を行った。昨年度、酸化タングステンナノチューブ(WO_3NTs)の合成法を確立し、それを受け本年度は、適切な助触媒の担持法や担持量の最適化を行い、光触媒活性評価をAcid Red 88アゾ染料の可視光照射による脱色により行った。その結果、WO_3NTsにAgを1wt.%光析出法で担持させた後、CuOを0.1wt.%含侵法で担持させる方法が最適であった。XPS測定によってAg原子とCu原子の酸化状態を検討したところ、Agは金属銀でCuはCuOとして担持されていることが確認された。Ag/CuO/WO_3NTsの光触媒活性はAg/CuO/WO_3ナノ粒子(NPs)と比較して約1.5倍、市販の可視光応答型のN-TiO_2と比較して約6.4倍、WO_3NPsと比較して約30倍高くなり、チューブ構造の触媒活性への寄与が見られた。また、AgとCuOの2成分を共担持することによる相乗効果も認められた。Ag/CuO/WO_3NTsの光触媒活性の向上は、DRSスペクトルおよびPLスペクトルの結果から、WO_3表面に担持したAgによる電荷分離の促進とCuOによる効率的な酸素還元反応の促進、さらにバンドギャップの狭窄に起因すると考えられた。
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