この研究では、環境調和型化学システムの確立に向けて、研究代表者の従来研究であるメソポーラスカーボンを用いた燃料電池触媒研究の特徴を活かし、新たに酵素を組み合わせることで、白金代替触媒の開発を目指すことを目的としている。酵素の中でも高い酸素還元特性が報告されているマルチ銅オキシダーゼを利用し、メソポーラスカーボン-酵素複合触媒の創製を試みた。 既に合成方法を確立している直接合成法を用いて合成したメソポーラスカーボンを担体として用い、酸素還元酵素としては市販のラッカーゼ酵素を利用した。これらを組み合わせることでメソポーラスカーボン-ラッカーゼの複合触媒を合成した。具体的には、ラッカーゼ分散液をメソポーラスカーボンに粉末に吸着させ、撹拌・分離工程を経てバルクの粉末材料を合成した。この時、メソポーラスカーボンのナノ空間効果の比較対象として市販のカーボンブラック担体も同様に用い、カーボンブラック-ラッカーゼ複合材料も合成した。 カーボン担体へのラッカーゼの吸着に関して言うと、カーボンブラックにはよく吸着するものの、メソポーラスカーボンにはその20%程度しか吸着しなかった。一方で、触媒活性を評価した結果、カーボンブラックよりラッカーゼ吸着量の少ないメソポーラスカーボン触媒のほうが、ABTSの還元において5倍以上高い活性を示すことが分かった。このことから、酵素量あたりの活性を考えると従来のバイオ燃料電池の活性をはるかに向上できる可能性が出てきた。これらの成果については、国内外の学会で成果発表を行った。 実際の電極触媒としての評価は、メソポーラスカーボン-ラッカーゼ複合材料を作用極としてHalf-cellシステムにて、酸素還元活性評価を行った。具体的な作用極作成方法として、メソポーラスカーボン-酵素複合材料分散液をカーボンロッド上に滴下・乾燥し、バインダーとしてナフィオンを使用した。今年度は、触媒が作用極として上手く固定できないなどの問題があり、来年度に向けて固定法及び評価方法を検討している。
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