研究課題
車成22年度の研究結果から、遺伝子・タンパク質レベルでゴカイ類が各種汚染底質に適応した底質浄化能力を保持していることが解りました。当該年度は、ゴカイ類を用いた海洋底質環境浄化(バイオレメディエーション)技術の確立に向け、より実践的な研究結果を得るため、生息域の異なる3種のゴカイ類(イシイソゴカイ、ニケゴカイ及び、イトゴカイ)を用いた実環境中の汚染底質浄化試験を行い種々の汚染指標の変化を調べました。50日間の試験後にイシイソゴカイの成長が最も高く、5.5倍に増加しました。また、コケゴカイは、底質の撹拌作用が大きく、底質中の酸化還元電位を試験開始前の-133.4mVから+137.5mVまで上昇させ、底質を還元状態から酸化状態へと改変させました。また、ゴカイ類を添加した全ての試験区において底質中の代表的な汚染指標である酸揮発性硫化物量が減衰し、特にイトゴカイ区では1.46mg/g-dryから0.48mg/g-dryとなりました。次に、底質中に含まれる有害化学物質削減能力を調べるため、底質汚染物質としで知られる多環芳香族炭佑水素類の底質中濃度を比較しました。その結果、コケゴカイが生物重量当たり最も高い削減能力を示ました。以上の結果から、ゴカイ類は実環境中汚染底質を浄化することが可能であり、さらに、種により異なる底質浄化能力を有することが解り、ゴカイ類を用いた環境浄化技術確立に向け非常に重要な結果が得られました。また、ニケゴカイに高い有害化学物質削減能力が認められたことから、有害化学物質の代謝に関与していると考えられる薬物代謝酵素チトクロムP450(CYP)のクローニングを行い、コケゴカイのCYP遺伝子発現量を測定するリアルタイムPCR法を確立しました。この測定系は、ゴカイ酵素活性をバイオマーカーとした新たな環境影響評価法に繋がることが期待されます。
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Marine Biology
巻: 158 ページ: 1211-1221