金属ナノ構造が発現するプラズモン共鳴は光の回折限界を超えてナノ領域に光を局在化および増強させることができるため新しいナノスケールイメージング、SERS(表面増強ラマン散乱:Surface Enhanced Raman Scattering)を用いた高感度化学分析、光導波路による集積回路、負の屈折率を有するメタマテリアルなど幅広い応用が期待されている。その金属ナノ構造を作製する手法として期待されている技術はナノ粒子のセルフアセンブルである。プラズモン共鳴の特性は、近接したナノ粒子との相互作用があるため、ナノ粒子の間隔に大きく依存する。そのため、ナノ粒子間隔を粒子径程度から1nm程度まで制御可能なセルフアセンブル技術が強く望まれている。 そこでナノ粒子のプラズモン共鳴の特性を制御するために、粒子間相互作用が及ぶ粒子径程度から1nm程度まで粒子表面間隔を制御可能な新しいナノ粒子配列技術を提案し、その確立を本申請課題の目的としている。 平成22年度には、ナノメータスケールの溝パターンをテンプレートとしたTemplate-Assisted Self-Assembly手法によって、粒子二量体構造の粒子間隔を10nmから60nmまで10nm毎に高精度に制御できる技術を構築した。ナノスケール溝へのセルフアセンブルの際に問題となる粒子間反発力を電解質添加によって抑制し、90%程度の高収率で粒子間隔が制御された粒子二量体構造を作製することに成功した。 本技術の構築によって、プラズモン共鳴を大きく増強可能かつ応用に最適な特性に制御できることが期待でき、これまでに粒子配列では実現できなかった性能を有する表面増強ラマン散乱を用いた高感度化学分析と粒子光導波路を実現する。
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