研究概要 |
本年度の研究目的は,カーボンナノチューブの化学修飾における化学修飾分子の結合サイト制御である.この研究目的に従い,酸化剤、過マンガン酸カリウムがどのようにナノチューブに配列するかを密度汎関数法計算で検討した.実際には,一番目の過マンガン酸カリウムがナノチューブに吸着した後、二番目の過マンガン酸カリウムがどこに吸着しやすいかを,エネルギー論の立場から議論した.平成22年度に得られた知見を以下に列記する. (1)一番目の過マンガン酸カリウムがナノチューブに吸着後,二番目の過マンガン酸カリウムは、一番目の吸着サイトに対して円周方向に吸着しやすいことが分かった.一方,一番目の過マンガン酸カリウムにより即座にナノチューブの炭素炭素結合を開裂した場合,二番目の過マンガン酸カリウムは開裂部位に対してチューブ軸に沿った位置に吸着したほうがエネルギー的に安定である.これは,炭素炭素結合を開裂することでナノチューブ表面が歪み,その部位の化学活性が高くなることに起因する. (2)炭素炭素結合開裂をともなう過マンガン酸カリウム吸着は,チューブ表面へのジケトン生成をもたらす.このジケトン生成により,チューブ軸に沿う選択的吸着はさらに強化されることが密度汎関数法計算により分かった.また,生成するジケトン数にともない,ナノチューブ開裂度合いが急激に増加することが分かった.このナノチューブ開裂部位は,遷移金属原子の選択的吸着位置になるものと考えられる.従って,これらの知見を援用し平成23年度の研究を行う予定である.
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