研究概要 |
強磁性体の内部磁場は非常に大きいため、磁場効果・磁気効果を検討する場として強磁性体内部は非常に魅力的な反応場といえる。しかしながら金属酸化物に代表される無機磁性体では磁性体内部への反応基質の導入は困難である。本研究の目的は、「構造設計可能な分子性磁性体を用いたナノ磁性空間を構築し、孤立微小空間における新しい磁場特異的反応の探索とその現象解明を行うこと」である。三次元ホストに比べ構造に自由度があり層構造を保ったまま様々なゲストを包接可能な二次元層状化合物を用い、目的とする磁性体内部における反応として、アミノ酸の光分解反応を用いることを目指し、コバルト層状水酸化物を目的化合物とした。以上より、手法として水熱合成法を用い、ゲスト分子として13種類のL-アミノ酸(L-Glu, L-Asp, L-Lys, L-Arg, L-Prp, L-HydroxyPro, L-Ala, L-Val, L-Leu, L-Phe, L-Cys, L-Ser, L-Trp)及び4種類のDL-アミノ酸(DL-Glu, DL-Ser, DL-Ala, DL-Phe)を用いて合成を行った。条件検討の結果、DL-Phe錯体では新たにTC=34Kという非常に高い転移温度を有する保持力100 Oeの強磁性錯体が得られた。その他9種類のアミノ酸を用いたときにも粉末状の錯体が得られた。アミノ酸を包接した相間距離の異なる一連の層状磁性錯体、特に強磁性体の報告は非常に少なく、また、水熱合成法を用いたアミノ酸をゲストとする錯体の構築方法を確立できたことは大きな成果である。本年度の目標は反応基質を包接した転移温度10K以上の強磁性またはフェリ磁性超分子体を構築することであり、十分達成できたと考える
|