研究概要 |
固体高分子形燃料電池の電極触媒として貴金属が主に使われているが,コスト削減のために触媒使用量を大幅に削減する必要がある。そこで高活性な表面構造をもつ構造規制Ptナノ粒子を用い大幅な削減を達成することを目的とする。このために、(1)構造規制Ptナノ微粒子の触媒活性評価の確立、(2)触媒劣化に対する再生法の確立、(3)原子レベルでの電極反応場の解明を行なった。具体的な成果は次に示す。 (1)構造規制ナノ微粒子の触媒活性評価 触媒活性の評価には比表面積および質量活性があるが、実用触媒の評価には後者を見積もることが重要である。そこで、粒径10nmの立方八面体型および立方体型微粒子の質量活性を評価した結果、現在用いられている標準触媒(田中貴金属TEC10E50)と同等な活性であるととが明らかとなった。標準触媒の粒径が2nmであることを考慮すると、構造規制ナノ微粒子の活性が高いことを意味しでいる。構造規制ナノ微粒子の微小化により触媒使用量を大幅に削減することが可能となるため平成23年度に取り組む。 (2)触媒劣化に対する再生法の確立 構造規制したナノ粒子を燃料電池触媒として用いた場合、起動停止に伴い微粒子の溶解や再析出が起こるため劣化する。そこで、電位パルスによる劣化触媒の再生を試みた。構造規制ナノ微粒子に電位パルスを印加したところ、酸素還元に活性なPt(110)面に特有な電流ピークが増大することが判明した。電位パルスを定期的に印加できれば、劣化防止につながることを見出した。 (3)原子レベルでの電極反応場の解明 電極反応は、表面構造と電極の種類に依存するが、近年の研究では電気二重層の構造も重要な役割を果たしていると考えられている。構造規制したナノ微粒子は、微粒子表面の平坦性が高い。そとで、電気二重層の構造解明のため、単結晶電極を用いて表面X線向折を行なった。外部ヘルムホルツ面に存在するイオン種の構造を明らかにし、このイオン種が電気化学反応にどのような影響を及ぼすか調査中である。
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