研究概要 |
固体高分子形燃料電池の電極触媒として貴金属が使われているが,コスト削減のために触媒使用量を大幅に削減する必要がある。そこで本研究では,高活性な表面構造をもつ構造規制Ptナノ粒子を用い触媒使用量の削減を達成することを目的とする。このために,(1)粒径の微サイズ化,(2)触媒劣化の防止の研究を実施した。具体的な成果は次に示す。 (1)粒径の微サイズ化 構造規制したナノ粒子の合成法については,さまざまなキャッピング剤を用いた方法が提案されているが,いずれの方法も粒径は10nm程度である。実用化のためには,数nm程度まで微小化し質量比活性を向上させる必要がある。そこで,合成条件の最適化により6nm程度まで立方八面体型および四面体型ナノ微粒子の微小化に成功した。これらの微粒子について燃料電池で重要な酸素還元反応活性を評価した。面積活性は,10nmの微粒子と比較し大きな変化はなく,対して質量活性は,10nmのものより向上しており,より微小な構造規制ナノ微粒子が有効であることを示した。 (2)触媒劣化の防止 電極触媒としてPtなどの貴金属が使用される場合も燃料電池の起動停止により,触媒表面が溶解,再凝集し性能が劣化する。本研究では,表面合金による溶解防止および電気二重層内の水和イオン種を劣化防止に活用できないか検討した。前者については,高耐久性を示す合金層の発見には至っていない。しかし,後者については,Ag(100)およびPt(111)電極上の水和イオン種の構造を表面X線回折により明らかにした。特定のイオン種が表面吸着層と非共有結合性の相互作用を形成し,表面原子の酸化や溶解を防ぐ効果があることが明らかとなった。
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