研究概要 |
本研究の目的は、試料への光照射により生じた光誘起電場、あるいは印加した静電場の空間分布を試料内部から外部に至るまで定量的にナノイメージングする手法を開発することである。具体的には、電子顕微鏡の一つである電子線ホログラフィー技術をさらに発展させ、透過電子顕微鏡の試料ホルダーを改造することにより上記目的を達成することを想定している。 本年度の最大の課題にして、本研究テーマの最大の課題は、「如何にして透過電子顕微鏡の鏡筒内に限られた予算内で試料に光照射可能な装置を開発するか」である。当初想定していた光ファイバーを利用した光導入機構は,予算的、技術的にも採用は断念せざるを得なかった。また、試料に静電場を印加する仕組みも、光照射機構と組み合わせるには予算的に断念せざるを得なかった。代わりに、電子顕微鏡内で試料に光照射する機構として,レーザーダイオード(LD)を試料ホルダーに組み込むことにより、直接試料を光励起可能な仕組みを考案し、その装置を完成させることができた。 その特徴は (1)LD先端には光のコリメート機構を有しており、試料に照射する光を大気中で調整可能となっている。 (2)LDは交換可能になっており、照射する光の波長を容易に変えることができる仕組みとなっている。 (3)LDの前面に大気と真空とを隔てるビューポートを備えているため.将来的に、外部レーザー光の取り込や、偏光依存性の測定にも対応させることができる。 本年度は同時に、光誘起電場(光電場増強〉のナノイメジングに最適と考えられる試料作製や透過電子顕微鏡外部での試料評価装置も試み、当初の予定通り順調に研究を進めることができた。本年度は論文としてまとめる成果こそ少なかったものの、最大の課題を克服することができたと言える。
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