研究概要 |
本研究ではDNAと同じくイオンのみから構成される媒体であるイオン液体を用いる事で,DNAと機能性分子との複合機能化を提案する.まず,機能性色素であるポルフィリンのイオン液体への溶解性を調査した.既にカチオン性ポルフィリンがイオン液体へ溶解可能であることは確認したのに続き,従来DNAとの相互作用研究に用いられてこなかった非水溶性ポルフィリンを用いて調査した.THPPはイオン液体比率の上昇に伴いJ会合状態からモノマー状態へと解離したが,TpyPは今回用いたイオン液体には溶解せず,非イオン性ポルフィリンでもイオン液体に適用できる構造は限定されることが示された.また,このTHPPについて,イオン液体中でのDNAとの相互作用を調査したところ,THPP銅(II)錯体がイオン液体中でDNAに対しグルーブ結合することを確認した.通常DNA二重らせんと同じ媒体で用いることのできない非水溶性ポルフィリンが,イオン液体中でDNAと相互作用したことで,他の機能性分子との融合の可能性が示された.次に,カチオン性ポルフィリン銅(II)錯体-DNA複合体のキラル触媒としての応用を不斉Diels-Alderにより評価した.イオン液体比25%においては,DNAやポルフィリンのみの存在下より収率,立体選択性の向上は見られたが,エナンチオ選択性が低下した.しかし,イオン液体比を50%に上げたところ,エナンチオ選択性の改善だけでなく,DNA存在下では25%の場合と立体選択性が逆転するという非常に興味深い結果が得られた.
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