研究概要 |
本研究では、ナノ粒子の「サイズ、分子量、形状(構造)」を、分布を含めて精密に測定する手法を開発することを目的としている。これらは基礎的性質であるが、液中での測定は従来限定された条件(サイズ分布が狭い、分布形状を仮定した場合等)でのみ可能であった。本研究で放射光(SPring-8)を利用した「フローセル式SAXS法」を確立して実現する。フローセルの利用により、X線強度が強い放射光利用時の欠点の一つでもある、「照射の影響によるサンプルの変質が大きい問題」等も自ずと解決されると期待できる。本手法で弱会合性高分子など、会合のために孤立鎖の研究がバッチ式では困難となる系の応用が可能になれば、これまで測定対象外であった各種ナノ粒子混合物中の各成分の測定も可能になり、今後の様々な用途への応用が期待できる。 本年度は、本研究の要である「フローセルSAXS法」の確立を目指すべく、基礎的事項の確認を行った。具体的には、装置の校正及び精度限界の確認(2)X線照射効果(サンプルの変質)低減による精度向上、(3)濃度依存性の短時間測定による精度向上、(4)混合物の各成分を対象とした溶液散乱の短時間測定、を始めとした基本的な確認実験を行い、条件を最適化すると同時に、本手法の利点でもある、放射光のビームタイムを有効利用(ハイスループットイト化)するための装置開発も行った。SPring-8で、実験ハッチ内において高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用できるように、ハッチ外からのサンプル注入、フラクションコレクターによるサンプル回収等の制御を行うシステムを構築した。これにより、前述の(1)~(4)の測定を自動化することが可能となり,条件探索の迅速化が可能になった。
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