高分子のキャラクタリゼーションは基礎科学から応用まで幅広く求められているが、比較的低分子(分子量5万以下)のサイズ評価、特に回転半径の評価は、従来困難であった。高分子量に限定してサイズ評価が簡便に実施可能なSEC-MALLS法を応用して、放射光施設でSAXS測定を行う事により、一連の分子のサイズ等のキャラクタリゼーションを迅速に行う手法の開発を今年度も引き続き取り組んだ。昨年度は比較的太いカラムを利用して、調整の容易さを重視した実験を行って来たが、今年度はより細い径のカラムを利用して多種類のサンプルに適用して、回転半径の分子量依存性を得た。カラムの径が増加すると、より多くのサンプルを注入可能となり、感度が高くない検出器での同時分析が可能となり、濃度他の確認時になる利点があった。SEC-SAXS実験を行った後のサンプルを回収して各種分析を行う際にも、サンプル量が比較的多く、各フラクションで十分な量が得られるため、各種確認が容易であった。しかし、必要なサンプル量が多いために、貴重なサンプルを利用しにくいという欠点があった。実験時間が限られる放射光施設では調整の容易さは最重要であったが、基本的な装置系のセットアップは昨年度終了したため、本年度は多種類のサンプルに対してSEC-SAXS法を適用する事を目的として、必要サンプル量の低減化を測った。具体的には細いカラムを利用し、フローセルに流す流量も減らすことで、分離及びSAXSの測定精度を保ったまま、必要サンプル量を約1/10にする事に成功した。また、より高性能なX線検出器、ピラタスを使って高精度化にも取り組んだ。高感度かつデータ転送速度が速い特徴を活用して、ダイナミックレンジの広い測定が可能となった。これにより、より広範囲な応用が見込めるようになった。一連の多糖類、デキストラン、デキストラン硫酸、プルラン、イヌリン、キシログルカン、ガラクトマンナン等についてSEC-SAXS測定を行い希薄溶液物性を検討した。
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