本研究は、形と大きさを適切に設計した金属ナノ構造体を作製し、人工的にプラズモン増強電場効果を誘起して、高感度センサーを実現することを目的にしている。数nmから数十nm程度の幅をもつギャップ構造を持つ金属ナノ構造体を作製すると、そのギャップ間にはプラズモンに誘起される増強電場が生じる。そのような増強電場周辺で周囲の屈折率が変化すると、鋭敏にプラズモン共鳴波長が変化する。その変化から周囲の屈折率変化を捕らえるプラズモンセンサーとして機能する。本研究では、nm単位で距離を制御したギャップ構造配列を数センチの大面積で集積化し、実用的なプラズモンセンサーとしての機能の確認を行った。本年度は、実際にギャップ間の電場増強効果を確認するために、金属ギャップ構造体を作製とその光学特性の評価を行った。具体的には、金-フッ化マグネシウム-金で形成される金属ギャップ構造(MIM構造)を作製した。塗布する鋳型構造にはインプリントで準備した矩形構造体を利用し、金とフッ化マグネシウムを均一に蒸着法によって塗布した。矩形鋳型であるため、均一な塗布方法には最適化のための多大な時間を要した。フッ化マグネシウムの蒸着時間を厳密に制御すると、nmオーダーでギャップ幅が制御されたギャップ構造の作製でき、ギャップ幅を変化させた一連のサンプルの作製に成功した。スペクトルを測定すると、ギャップ幅を変化させるにつれてピーク位置がシフトする様子を確認した。ギャップ幅がギャップ構造体の共鳴波長に対して何らかの影響を持っていることが示唆されたといえる。
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