本研究では、炎症性腸疾患の治療を目指し、カーボンナノチューブ(CNT)による経口投与薬物送達に関する基礎研究を行うことを目的とした。CNTの経口投与に関する研究はほとんどされていないことから、まず、CNTの一種であるカーボンナノホーン(CNH)をマウスに経口投与し、腸管との相互作用や体内拡散について調べることにした。今年度の主な研究内容は以下の通りである。 1.ラベル付きCNH作製…ガドリニウム酸化物をラベルとして内包させたCNH(Gdox@CNH)を作製した。既報を基に、より多くのガドリニウム酸化物を内包できるように、条件検討を行い、調製法を改良した。 2.正常マウスへの経口投与実験…1で得られたGdox@CNHを正常マウスに経口投与し、4~48時間経過後に解剖、各臓器を取り出してホルマリン液に固定した。現在、このサンプルのGdox@CNH量を測定中であり、データが揃えば生体内分布を解析することが可能となる。 3.疾患マウスへの経口投与実験…2と同様の経口投与実験を、炎症性腸疾患の1つである潰瘍性大腸炎のモデルマウスにも並行して行った。こちらのサンプルも現在Gdox@CNH量を測定中である。なお、この実験に先駆けて、潰瘍性大腸炎モデルマウス作製の際に投与するデキストラン硫酸ナトリウムの投与量検討・発症した大腸炎の評価法決定などを目的とした動物実験を別に行った。 4.プレドニゾロン担持CNHの作製…酸化処理により開孔させたCNHに、プレドニゾロンを効率的に担持させるための条件検討を行った。また作製したプレドニゾロン担持ナノホーンからのプレドニゾロンの放出を液体培地中で確認した。このサンプルは、最終段階で疾患治療効果を検証する際に用いる予定である。
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