研究の目的 本研究は、ナノファイバーを用いた幹細胞の未分化状態を制御する新規手法の開発を目的とする。 iPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞を、未分化状態を維持したまま培養するためにはフィーダー細胞を足場として使用することが基本的には要求されている。この操作にかかる手間と制御の難しさが幹細胞実験の枷の1つなので、フィーダー細胞を使用せずに幹細胞を培養する手法の開発が求められている。本応募課題では、ナノファイバーを幹細胞の足場材料として用い、未分化状態を制御する新規手法の開発を目指す。前年度ナノファイバー上でヒトiPS/ES細胞の未分化状態を維持する方法を検討してきた。今年度、接着因子や未分化状態の維持作用を持つ因子などと融合し、より高くヒトES/iPS細胞の未分化、分化状態を維持する基盤を実現する。更にヒトiPS/ES細胞をパターニング化させる方法を確立する。 研究実施計画 (1)細胞接着因子と未分化状態を維持する小分子化合物と融合させ、ヒトiPS/ES細胞の未分化状態の維持率が向上させる。 具体的な工夫:(1)PMGIにより、gelatinで作ったナノファイバーがヒトiPS/ES細胞に適切な材料であることがわかった。その続き、ファイバーの密度や、太さなど検討する。(2)ヒトiPS/ES細胞の接着能をアップするため、接着因子(E-cardherinなど)を融合する方法を検討する。(3)未分化状態の維持作用がある小分子化合物と融合し、ナノファイバー単独より、更に高度なヒトES/iPS細胞の未分化状態を維持する方法を検討する。 (2)ナノファイバーとMEMS加工技術との融合によりナノファイバーパターンを作製し、ヒトiPS/ES細胞をパターン化する。 前年度、マウスES細胞はMicro Contact Printing (μCP)、photolithgraphなどのMEMS技術と融合して作ったナノファイバーパターンの上で培養し、マウスES細胞のパターニング化をさせた。それを基づき、更に研究計画(1)で見出したよい条件でヒトiPS/ES細胞をファイバー上でパターニングできるかどうかを検討する。 具体的な工夫 (1)パターンの間隔を調節することにより、コロニー間の距離と位置を制御する。(2)パターンサイズを変更することにより、コロニーのサイズをコントロールする。 この方法が成功すれば、幹細胞の未分化状態を維持する足場となり、更にコロニーパターニングが制御され、幹細胞培養の新手法の開発が予想される。
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